「竜」と「龍」の違いを徹底特集!色んな視点で掘り下げてみたよ
私は昔からの坂本龍馬ファン。自営業としての運気を上げようと、岡山から長崎まで行って、彼の作った日本初の株式会社と言われている亀山社中にも何度も訪れていたりします。
そんな龍馬ですが、「龍馬」と表記する場合と、「竜馬」と表記する場合がありますよね。
例えば、2010年の大河ドラマだと「龍馬伝」、司馬遼太郎の小説だと「竜馬がゆく」と、物語のタイトルでもハッキリと違いがあります。
龍を名前に使う時の意味を扱った記事では『両方が人名用漢字として認められている』との旨を書きましたが、なぜそんなややこしいことになっているのか。そこに大いに興味が湧き、実はその際に細かく調べています。
今回はそうしたところをシェアさせていただきますね。ちょっといつもと違うコラム的な記事として、漢字にスポットを当てての竜と龍の違いを書いていきたいと思います。
まずは基本的な違いから簡単に
これらの2つの漢字の違いをシンプルに表現するなれば…
- 竜:常用漢字
- 龍:旧字体
日本ではこの様な形で扱われています。
常用漢字とは一般の社会生活で使う目安となる2,136種の漢字であり、日本語を書き表す際にはこの常用漢字を利用することが推奨されています。
したがって、新聞や教科書、公用文書や雑誌、テレビ放送などでは「竜」が使われていると考えてください。
例えば、小学校の国語のテストなどで、「"りゅう"を漢字にしてください」という問題があったとすれば、「竜」が正解となります。
ただし、名前においては両方が使えるとされていますし、漢字の本場であろう中国では、むしろ「竜」の表記の方がピンと来ない人が多く、細かく考えていくと違いは中々ややこしくなってきます。
そうしたところにもスポットを当てるべく、竜と龍の表記の歴史に触れつつ、掘り下げていくとしましょう。
「竜」と「龍」表記の歴史
「竜」が常用漢字表に記載されたのは、1981年(昭和56年)です。
それまでは龍と竜の両方が使われていました。一般的には「龍」の方が根強かったそうです。これは恐らく、中国では烏龍茶等、龍が一般的に使われているからでしょう(今でも)。
では、なぜ「竜」が常用漢字として採用されたか。その謎は第二次世界大戦後に始まったの国語改革を紐解くことで見えてきます。
国語改革とは戦後に『国語表記の平面化を図り、教育上の負担を軽減する、また、社会生活における能率を増進することで、文化水準を向上させる』という目的で行われた施策です。
この改革の初期である1946年(昭和21年)頃から、複数の表記がある漢字では簡易体を使うことが増え始めました。
こうした簡易体の利用が調整と共に増えていった結果、「竜」は常用漢字となり、一般に使われる漢字となったのです。
つまるところ、シンプルにお伝えするとこの時代に「竜の方が書きやすいから、こっちを使う様にしてね」と決められた。こんな風に考えてください。
普段使いの漢字としては、竜が好ましい。こういったイメージですね。
人名用漢字はちょっと特殊だったりする
人名用漢字としては、「竜」と「龍」の両方が使えます。何故ならば、一般生活においては常用漢字の利用が基本ですが、名前、地名などの固有名詞は例外とされているから。これが理由です。
例えば、『明日から常用漢字表を変更するから、名前を「竜」で記載してね。』と、龍之介という名前の人が突然知ったとしたらどうなるか。当然困惑しますし、受け入れられないという人も出てきますよね。地名などにおいてもそこは同じです。
そうしたややこしさを排除する意味もあるのでしょう。1956年(昭和31年)には法務省が「名付けにおいては、竜と龍の両方を使って良い」と回答した記録が残っています。
坂本龍馬については、そうした流れから歴史上の人物も慣例的にどちらで表記しても良いとなった。こう考えてください。
色んな辞典が一括で検索できるコトバンクさんで、「坂本龍馬」と「坂本竜馬」を検索すると、掲載されている辞典によって表記が異なることからも、この慣例が見えてきます。
別の漢字で例を出すと、駒澤大学は学校が「澤」を使っていますが、東急電鉄の駅だと駒沢大学駅と「沢」が使われます。
これらは両方とも固有名詞であり、名付け側にその判断が委ねられているということ。要は、常用漢字を重要視するか否かで違いが出ているという訳ですね。
出生届に要注意
と言うことで、名前にはどちらを使っても良いし、歴史上の人物から分かる様に、状況によって入れ替えても良いのが「竜」と「龍」だと言えます。
ただし、戸籍に表記されるのはどちらか1つです。
出生届を提出する際に記載した漢字によって、戸籍上の表記は決定されますので、名付け側の気持ちや画数などからしっかりと選んでおくのが良いでしょう。
なお、「龍」にはそれ以外の問題もあります。
龍が含まれる名前を出生届に記載したところ、役所から「受理できない」と返答されたという事例がネット上で多々見受けられました。
その原因は、自治体によっては戸籍上の名前については、龍の一画目を横棒にした以下の漢字しか認めないとしていることです。
こちらの記事のポイントをまとめると…
- 1951年(昭和26年)5月14日に名前に使う漢字を増やす為に人名漢字が審議された
- その際には龍の一画目が"、"に近いもので印刷された
- 翌週の5月22日に閣議にて龍の人名での利用が認められた
- 5月25日に龍が含まれる人名用漢字別表が官報に記載された
- その官報は印刷庁が利用していた活字が使われた為、一画目が横線の龍となっていた
- それ以来、人名用漢字の龍は横線が正式となった
上記のとおりです。
かつては印刷をするにも、手書きのガリ版が使われていました。それが原因で文字の記載に差が出てしまったのです。
実際のところ、人名においては龍の一画目が横棒でも縦棒でも同一の字体と見なして良いとされているのですが、役所にとってはそれが通らないこともある。
こうした点は正にお役所ならではの融通の利かなさと言っても良いかもしれませんね(汗)
なお、戸籍に横線の龍が記載されたとしても、縦線の龍と同じだと考えてオッケーでしょう。厳密には違いがあるとは言え、上記のとおり単なる印刷の問題が原因ですし、気にする必要は無いと言うのが私の考えです。
ところで「辰」はどうなの?
最後におまけで、「辰」について触れておきます。干支の辰年などで、いわゆるドラゴンとして扱われる漢字ですね。
こちらの漢字には、干支を覚えやすくする為に、神話上の動物である竜が当てられましたが、そもそもは全く別の漢字だと考えてください。
十二支には動物のイメージがありますよね。しかし、それらのほとんどは後から作られたもので、元々は方角や時刻、星座などを表す為に利用されていました。
「辰」という文字の由来は…
- 舌を出している大きなシャコガイ科の二枚貝を描いた図形(象形文字)
とのことだそうです。
この貝は殻を開くと大きな舌を出して震えている様に見えるので、「震え動く」「生気が盛んである」というイメージを記す記号となり、それがやがて十二支に使われる様になりました。
こうして考えると、現代では同じ歴史上の動物を指すとは言え、「竜」や「龍」とは別の漢字だと言えますね。
坂本龍馬本人は「龍馬」を使っていたとされています。
したがって、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」は敢えて常用漢字を使ったということになりますね。
彼の語るところによると、小説の中のリョウマは彼が動かすリョウマであり、実在したリョウマとの区別を計る狙いが「竜馬」と表記した理由だったそうです。
常用漢字だから使ったという以上の理由がそこにはある。個人的に非常に興味深いポイントでした^^
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